Rouge Tea Party @Caltech

Caltechで理論物理の研究をしています。

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1月後半から2月前半

Caltechには、夏の間に学部生が研究プロジェクトに参加できるようなプログラムがあります。SURFという名前のプログラムで、夏期休暇の10週間きちんと大学から給料を貰って、教授やポスドクと一緒に1つの研究プロジェクトに取り組みます。

https://www.sfp.caltech.edu/programs/surf

この夏、僕もSURFの学部生を1人取ることにしました。たまたま簡単だけれども良い論文が書けそうな面白いテーマを見つけたので、ボスを通じて募集をかけてもらった所、9人の学部生が興味を持ってくれました。

9人全員と面接をしてみた結果、とても優秀な学生が2人いました。

1人目は、高校時代にすでに論文を書いているようなハイスペックな学生で、現在2年生。2人目は物性論の研究をしている学部3年生で、韓国の物理オリンピックの1番だった子でした。

けれど、僕が2人の学生を取るわけにはいかないので、前者の学生をとる事にしました。後者の子を断るのは本当に心苦しかったですが、余りにも雰囲気が自分に似ていたので敢えて選ばないことにしました。前者の子は、CaltechかMITでしか会えないようなタイプの学生だと思ったのも理由の一つです。

でも、こんな優秀な子を他のグループ(紐理論や物性理論!)に放流するのは惜しかったので、本人を説得して同僚のポスドクの学生になってもらう事にしました。

ちなみに、公式には夏の間だけなのですが、僕のとった学生は夏の前からも、夏の後も継続して学位取得までこの分野の研究を続けたいということでした。その辺りも僕にとっては大きな決め手となりました。



さて、先週は学会でバルセロナに行っていました。QIPという学会です。

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QIPは、量子情報理論関連の学会の中では最も権威のある学会の一つと考えられており、どちらかというとCS寄りの純粋理論に焦点が置かれているのが特徴です。実際に、トークのaccept率は15%程度だったようで、この分野の多くの研究者にとって憧れの学会となっているようでした。

学会自体はとても良くオーガナイズされていて、トークもなかなか難しそうなものばかりでしたが、僕個人としては少しmixed feelingでした。

招待講演やレビュー講演を除くと約30のトークがあったのですが、それらは大体2つのカテゴリーに分ける事ができます。

(a) 新しいアイデアや概念を提唱するトーク
(b) 数学的な証明やテクニックの開発に重きを置いたトーク

もちろん、この2つを正確に分類していくのは不可能なのですが。

僕は、分野がhealthyであるためには(b)のスタイルのトークは3割以下であるべきだと思っています。けれど、今回の学会では、(b)のスタイルのトークが7割ほどでした。これは、量子情報という分野が確立されて、QIPという学会が権威のあるものになったが故の弊害なのかなと思います。

トーク自体が非常にテクニカルになっていて、小数の専門家に向けられた形になっているのも、QIPが大きくなりすぎた弊害の一つのように思います。多くの人たちにとって、トークを取ることが目的になってしまっていて、トークの発表自体は2の次という印象を受けました。



興味があったので、学会運営について話し合うbusiness meetingにも参加してみたのですが、色々と興味深い問題が浮かび上がっていました。

まずは、参加者が400人を越えていて300近いポスターが発表されているなかで、ポスターの質の差に歴然とした開きが生まれているという点。ポスターのaccept率を減らすというのも一つの解決法なのですが、参加者を増やさない限り収支的な意味では成功とは言えないので、難しい問題です。

次は、いくつかの研究結果が非常に近い、又は関連した内容であるために、merged talkとして2、3のグループに1枠しかトークのスロットが与えられなかった点。より多くのテーマをカバーするには仕方の無い事かもしれないですが、mergeしろと言われた人たちの気持ちを想像すると、複雑な問題のように思います。

最後に、トークの時間の問題。今回は30以上あるトークの中から4つのトークが50分のスロットを与えられて、他は全て30分でした。けれど、このアップグレードシステムの判断基準は公平ではなかったと思います。具体的には、4つのうち2つがmerged talksで、関わった著者の数が10近くになっているようなもの、残り2つは分野の大御所によるトークでした。

僕個人としては、ポスターセッションの全体的な質の低下は非常に問題だと思うので、分野の将来を心配するのであれば、絶対に数を絞るべきだと思います。

Merged talkに関しては、30分のトーク1つにまとめるのではなく、20分のトーク2つにするべきだと思います。

アップグレードの問題に関しては、権威ではなく研究の質で選ばないと、学会への参加者は増加するでしょうが長い目で見た時にはマイナスだと思います。




さて、学会滞在中にはarXivに論文を投稿しました。3次元イジングモデルのcritical exponentを解析的に求める試みに関してです。繰り込みをつかっています。

http://arxiv.org/abs/1402.0619

fig_RG.jpg


この論文は、いわばハイリスクハイリターンな感じの研究内容で、発表するのを非常にためらっていました。けれど、一緒に働いている学生さんにとっては、論文が出るか出ないかは大きな問題だと思ったので、何がわかっていて何がわかっていないのかを注意深く書きました。

論文には想像以上にたくさんの反応や質問がありました。特にConformal Bootstrappingをなさっている方から、色々と参考になる文献を教えていただきました。分野外の人がほとんどであるscirateでも評価していただいて、学生さんはとても嬉しそうでした。


以下、バルセロナでの写真です。

サグラダファミリア。8年ぶりでした。町を歩いていても、昔とは感じ方が全然違っていました。「異国の町に行く事」に対する新鮮な感覚が年々少なくなって行くのは残念なのですが、何年かぶりに再訪して「懐かしい」と感じられるようになったのは、歳をとることの良い面でもあり悪い面でもあるのでしょうか。

IMG_4366v.jpg

カセドラルの屋上から撮った写真。鳥は、ほんとにかわいいです。

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コロニアグエル教会。ほとんど人もいなくて、静かな村という感じで、おススメです。

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  1. 2014/02/10(月) 06:16:43|
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